第28回『癒着について(その3-6)最終回』 ◆◆もしもあなたに世界が救えるなら◆◆

いつもありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。

昨日の記事まで、5回に渡って2014年2月11日に開催されました、東京カウンセラーズ・フェスタで講演させていただいた、『最高の恋愛は最高の癒し(ヒーリング)』の内容をお送りしてきました。

今回はさらに母子癒着を掘り下げ、どのように切り離していくかについてお届けしていこうと思います。

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「癒着」とは、何かと何かが好ましくないくっつき方をしていることを言います。

今回のシリーズで扱った「母子癒着」で言うと、母親と子供の間に自然に存在するはずの境界線が失われている状態です。

心の中で、どこからが自分でどこからがお母さんなのか分からないくなってしまうのです。

どうなってしまうかというと、自分の問題も相手の問題もどちらがどちらのモノなのか区別がつかなくなってしまうのです。

すると、くっついている相手の人生のパターンを、いつの間にか真似てしまうんですね。

お母さんみたいになりたくないのに、気がついたらそっくりの人生だった。ということの理由の1つが、ここから起きていたりします。

つまり、本来の自分の人生を生きられなくなってしまうのです

また、癒着関係にある時、私たちは必ず犠牲をしています。

犠牲とは、相手に与えることばかりしていて自分は一切受け取ろうとしない状態をいいます。

自分のほうから一方的に持ち出して相手にあげてばかりで、何も受け取らずにいるので、どんどん疲弊して疲れきっていくのです。

そこには我慢が積もり積もっていますから、外に出せなかった怒りが心に溜まっています。

すると、心の中で相手への不満や恨みつらみなどの文句が沸いてきて、攻撃をしたくなってくるのです。

では、どんな時に私たちは犠牲をしてしまうのでしょう?

それは、相手と対等な関係でないと感じている時なんですね。

犠牲をして、相手にたくさん与えて、ようやく対等になれると感じているんです。

また「これだけ色々してあげたのだから、私にもその分をお返ししてよね」という取引のような意識もあったりします。

母子癒着でも、母子ともにお互いに犠牲をしているようです。

子供は「私のせいでお母さんが悲しんでいるんだ」と感じていて、

お母さんは「私はきっとこの子には好きになってもらえないわ」と感じています。

お互いに相手に負い目があると思い込んでいるんですね。

それに「これだけやったのだから、私を愛してくれるわよね」という意識も心の奥に持っていたりします。

お互いに「自分をもっと愛して欲しい」という想いから犠牲をしてしまい、結果として一緒にいればいるほど苦しくなってしまうのです。

なぜかというと、「癒着」は「愛」と似ているけれど「違うモノ」だからです。

犠牲はその裏に「もっと私に~して欲しい」という要求を隠しています。

本当の意味での「絆」や「つながり」がベースになっていないんですね。

だから、つながりが欲しいのに相手との間に感じられない時、仕方なく「愛」とは違うんだけれど似ている「癒着」を選んでしまうのです。

相手を縛りつけてピッタリとくっつくのですが、それだと距離が近すぎるので相手が見えなくなってしまいます。

本や新聞を読むのに顔に付くくらい近づけたら、何も見えないのと同じように。

そして見えないから不安になり、また相手を引き寄せてしまう…という悪循環になってしまうんです。

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母子癒着を切り離し、犠牲を解消していくにはどうすればいいかというと、それはどちらかが「もうこの関係は終わりにしよう」と思うことです。

第三者に協力を仰ぐこと、また物理的に距離を取ることも有効な手段になるでしょう。

講演でお話したAさんのように先ず距離を取ることで、自分を取り戻すことが出来ることも少なくありません。

それには「この関係は癒着になっていたかもしれない」ということに気づくことが重要です。

この段階では自分を、またお母さんも責めたくなりますが、だからこそ冷静さが大切になってきます。

上に書いたとおり、犠牲をしていると怒りが溜まってきますので、お母さんに自分の思いを分からせたくなったり、怒りをぶつけたくなったりするんですね。

なぜこの関係にならざるを得なかったのかという理由、お母さんがつながりを感じられなかったことへの不安があったという事情などを、努めてクールに理解するための時間が必要なのです。

「このままだと苦しいだけだし、放っておいても何も変わらないから、何とかしよう!」という意志を自分にも周りにも示すことが出来るようになると、その時点ではだいぶラクになれているでしょう。

癒着を切り離すことは近い関係の人ほど痛みが強かったり、辛い気持ちが出てくることもありますので、あまりにも辛いようであればカウンセリングを受けたり、セラピーを活用してみると良いと思います。

私の場合セラピーでは、いきなり母子関係を扱うことよりも、先ずは十分に自分自身を受け入れ癒す「自己受容」をしていくことが多いですね。

そうして傷ついた自分を受け入れて、手当てをして、自分とのつながりを感じたうえで癒着を切り離していくんです。

切り離しをする時には、矛盾するようですがお母さんとの「つながり」を取り戻していくことを選択していくことがあります。

なぜなら、失われた「絆」をもう一度つくることが出来れば、もう癒着する必要がなくなるんですね。

今読んでいるだけでも抵抗感がある方もいるかもしれませんが、その感情を感じたままで近づいていこうと思ってみて欲しいんです。

癒着を切り離すのに伴う痛みを和らげるのは、実は「感謝」なんですね。

ただ、今すぐお母さんに感謝しなくてはいけないわけではないですよ。

しかし強い抵抗を感じつつも乗り越えていけた時、そして「つながり」という「絆」を見つけた時に私たちの心は解き放たれます。

それがお母さんとの関係が変わっていくポイントになるんです。癒着ではない新しい関係性を築くきっかけとなるでしょう。

その上で、心理的な癒着関係を完了させたときに、どんな距離感でつきあうのかが選べるんです。

自分が自分らしくいられる関係を。

もしかしたら、距離をおいてあまり関わらないようにするのが、自分にとっての真実だと感じることあるかもしれません。

どんな選択をするにせよ、先ずは勇気を持って「この関係を変えていこう」と思ってみてくださいね。

(終わり)

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