前回(第20回)の記事に対して、みなさんからたくさんのコメントを送っていただきました。ありがとうございました。
なかでも、
「記事に書いてあった母娘の話は、私の家と一緒です」
というメッセージを何通もいただきました。
カウンセリングをしていても、女性のお客さまから母親からの過保護・過干渉で自分の意思を持てなかったというお話を伺うことは少なくないんですね。
ここでは「癒着」という問題が起きているのです。
癒着とは自分と他者との心理的な境目が無くなってしまっている状態のことです。
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母と娘の例で言うと、お母さんと娘が背中合わせてピッタリとくっ付いてしまっているようなイメージになります。
(癒着は母親以外の他者や物との関係性でもおこりますが、今回は最も典型的な「母子癒着」を例に取ります。)
本来は、親子とは言えそれぞれ別々の人格があり感情も別物のはずなのに、お互いの一部がくっ付いていてドコからが母で、ドコからが子供の感情なのかがお互いに分からなくなっているのです。
子供の失敗を自分の失敗のように感じたり、子供の成功を自分の成功とダブらせて感じてしまうことも多くあります。
その為に母親が子供に対して一人の人間として認める意識があまり無かったり、相手の意思を尊重する気持ちが低かったり、自分の考えや感情を基準にして、それを子供に押し付けてしまったりして、子供の感情・行動を支配しコントロールしてしまいがちなのです。
すると、子供は自分の自発的な意思を持つことや、自分の考えや意見に価値を感じられず、常に違和感や、とまどい、自分自身への否定的な感情を持ち続けることも珍しくはありません。
結果、母親の言うことに従うことが、とりあえずの安全な道ということになるのですが、そうなると子供にとっては自立することが困難になるのはもちろん、
自由に感情を表現することが出来ず、喜びも悲しみも感情の全てが、母親から強要されたという形で感じることが当たり前になり、心に定着していってしまうのです。
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母親の顔色を伺い、機嫌・不機嫌を敏感に感じ取り、その反応を伺い、予測するセンサーの感度を常に最大にしておくことが、子供にとって自分を守る為に不可欠になっていきます。
やっかいなのは、心の中で痛みの感情と結びつき記憶されていくことです。
それがどのような影響を子供にもたらすかと言うと、母親が不機嫌でいたり、怒っていることに対して子供の感情も連動するように激しく揺さぶられるようになるのです。
母親の感情と、自分の感情の境界線が曖昧になり、どちらの感情なのか分からなくなってしまいます。
つまり母親の感情を読み取ろうとするあまり心が近づきすぎてしまい、自分の感情との区別ができなくなってしまうのです。
そうなると、母親の感情・問題を「自分が何とかしなくてはいけない」と感じるようになっていきます。
つまり他者の感情・問題であっても、自分が責任を持ってなんとかしないといけないという、感じ方のパターンが作られてしまうからです。
またこれは、母親以外の他人との関係でも現れることも多いようです。
他人の感情に敏感に反応できるだけに、細やかな気遣いができたり、良く気配りのできる有能な人、という評価をされることも少なくは無いのですが、
その分だけ人間関係では常に緊張感を感じてしまい疲れきっていたり、人づきあいに過度に苦手意識を感じてしまうというお悩みはとても多いのです。
次回へ続きます。