■Vol.6~「初期段階の心理と接し方のコツ part.3」
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。
うつ病になると、それまで楽しんでいた趣味や娯楽が、まったく楽しめなくなることが良くあります。
私自身も趣味にしていたことが楽しいと感じられなくなり、徐々に自責の念が心を占めていきました。最終的には、自分は何もできないという思いに押し潰されてしまい、文字通りまったく身動きが取れなくなっていきました。
それまでは仕事で忙しいながらも、時間を見つけてはアウトドアではキャンプやスノーボード、インドアではミステリー小説を読んだり、お笑い番組を見ることがストレスの発散になっていましたが、
うつ病になってからはそれらに触れるコトも考えるコトも出来ないほど、辛いという気持ちしか心の中にはありませんでした。
そもそも外に出られないので、アウトドアの趣味は出来るはずもないのですが、インドアにあっても本を開いても字を読むこと自体が苦痛なので、すぐに手から離してしまいますし、そのうちに本も雑誌も新聞も手に取ることが出来なくなりました。
テレビも楽しい面白い内容の番組ほど、自分がそう行った気分になれないのでとても視る気にはなれませんでしたし、かと言ってニュースなどの堅い内容のモノも自分が社会と関わっていないことを責められている気にさせられるので、長い間視ることが難しい状態でした。
うつ病になってからは楽しいことを想像したり、どこかへ出かけることを考えることが本当に全く出来なくなるのです。
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うつ病になる人は、ほぼすべての人が我慢をしていると言えるでしょう。
何を我慢しているかというと、それは「怒り」です。
怒りを我慢すると、私たちは同時に「寂しさ・悲しさ・嬉しい・楽しい」という感情も抑えてしまい、そして何も感じないようにしてしまうのです。
うつ病はこの中の「楽しい」という感情を禁止してしまい、感じられない状態なんです。
ただ、楽しいことが感じられないからといって、苦しいのに無理に楽しいことを探したり今までと違う新しいことをしようとしても、そもそも感情の上に乗っかっている怒りに気づいて、どかしてあげない限り、楽しさや喜びを感じることが出来ないのです。
だから、無理に楽しさの方にフォーカスしようとしても、成果をあげるコトは難しいでしょうし、また失敗したという気持ちで、さらに落ち込んで自分を責めるようになる可能性が高いでしょう。
怒りは「感情のフタ」と言われるものですが、その理由は自分の心の中の様々な感情・欲求を抑えてしまうからです。では怒りの下にはどんな感情が隠されているのでしょう?
そこには、「わかって欲しい」「助けて欲しい」「愛して欲しい」という欲求が隠れていると言われています。
怒りが出てくるということは、これらの欲求があるからこそなのですが、うつ病になる人のほとんどは、自立的な考えを持っていて、自分で何とかしたい、周りに迷惑をかけたくない、という思いがとても強い為、怒れないことが多いのです。
怒りを意識の力で出てこないように抑え、さらに怒りを感じるコトすらも禁止をするとその欲求があったコトを見逃してしまうようになるのです。
そうなると「わかってくれない」「助けてくれない」「愛してくれない」ことの悲しさ、寂しさも、本当は感じているのに無理やり抑え込んだ心では感じとれずに、心のどこかにほったらかしにされてしまうのです。
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私たちの心に100のエネルギーがあるとするなら、仮に出て行こうとする感情が10ある時、それを抑えるためのエネルギーが少なくとも10は必要になります。私たちはみんな臆病ですから、実際には少しでも漏れ出てこないように10を超える力で抑えようとすることが多いんですね。
10の感情に対して、抑えるために20のエネルギーを使っていると考えてみて下さい。
10と20の使用分を足して100から引くと、残りの70しか本来の力が出せません。
自分で自分のエネルギーを抑えているのですから、その時点でかなり無駄遣いを
していることは想像できますよね。非常にもったいないことをしているわけです。
前々回、そして前回のブログ「初期段階の心理と接し方のコツ part.1」、「part.2」でお話したことを思い出してみると、実はうつ病になるずっと前から、
・嫌っている自分を隠すため
・周りからの期待を背負うため
そして、今回お話した
・自分の怒りを抑えるために
自分自身のエネルギーを24時間365日ずっと費やしてきたようなものなんです。
自分を隠したり抑えたり、自分以外の何かを背負ったりするためだけにです。
そして心のエネルギーのバランスが、使えるモノと抑えるモノの力が同じ割合になり釣り合ってしまった時が、燃え尽きたと感じる時であり、動けなくなる時であり、うつ病になる時だと私は思います。
あなたの大切なひとがうつ病で苦しんでいるとしたら、表面に出ている症状だけでなくこんなことが心の中でおきていて、今の苦しみがあるのかもしれないと想像してあげて欲しいのです。
周りで支える人たちは、なんとかしてあげたい気持ちが強いほど、過剰に反応したり心配し過ぎたり、先回りしようとして焦ってしまったりしてしまいます。
しかしそれはうつに苦しむ本人にとっては、病気になったコトを責められているようにしか受け取れない時もあるんですね。
本人の気持ちに少しでも近づき、理解しようと思ってみてください。
動かそうとするのではなく、理解してみようと思ってみてください。
あなたの大切な人と一緒に歩み、一緒にこの病気を学んで行こうという思いを
持ってみることを始めた時から、苦しみをラクにするためのプロセスが始まるのだと思います。
(続く…)
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Vol.0~新連載シリーズのお知らせ「あなたの大切な人の『うつ』をラクにする方法」
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Vol.1~「支えている皆さんへ」
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Vol.8~「お客さまのメッセージから その2」
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