Vol.10~「どうして“頑張って”と言ってはいけないのか?」

■Vol.~10「どうして“頑張って”と言ってはいけないのか?」

いつもブログをご覧いただきありがとうございます。

心理カウンセラーの近藤あきとしです。

本やネットで、うつ病を扱った記事の中で「うつの人に言ってはいけない言葉」を見かけるありますが、中でも代表的なのものが

“頑張って”

ではないでしょうか。

では、なぜ“頑張って”と言わない方がいいのかと言うと、うつ病になっている人たちは、もうすでに自分の中で必要以上に頑張ってさらに頑張って、倒れるまで頑張って、ついには力尽きてしまった人たちなんですね。

そして抑うつ状態になり、自責の念に苦しみ、幻聴、拒食、自傷行為や、その他の症状に悩みながら、もう死んでしまえたら楽かもしれないという思いを抱えつつも、毎日を必死で生きています。

生きていること自体が、もう頑張っていると言ってもいいかもしれません。

そんな状態のところに“頑張れ”と言うことは、生き死にのギリギリの瀬戸際で苦しんでいる人を、さらに追い詰めることになりかねないんですね。

私自身は直接“頑張って”と言われたことは多くはありませんが、テレビや本や身近な人たちの頑張っている前向きな言葉や姿を見るたびに、今はそう出来ない自分を感じて傷つき深く落ち込んでいたことはよくありました。

それくらいがんばり続けてきた結果、うつ病になったのですから、当時はよく「これ以上どうがんばれっていうんだ!」と思っていました。仮に頑張れる余地が僅かにあったとしても、無理を重ねるだけでさらに病状が悪化していただけだったと思います。

病気から回復するにはどうしても時間が必要なケースが多いと思われます。

緩やかな回復と悪化を繰り返しつつ、ゆっくりと良くなっていくのを待つことも必要なことなんですね。

みなさんの大切な人がうつ病になった時には、周りで支える人たちは本人が焦らないようにしてあげることがとても大事なのです。

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“頑張って”以外にも、大切な人を追い詰めるかもしれない言葉としては

“思ったより元気そうだね”

“もっと外に出たほうが良いよ”

“前みたいに~、昔みたいに~”

“辛いのはあなただけじゃないんだよ”

などが言われますが、私が個人的に人から言われて一番辛い気持ちになったのは

“そんなの気の持ちようだよ”

という言葉でした。

毎日が辛すぎて、もう死んでしまいたいと思うくらい苦しくても、こうなったのは病気のせいにすら出来ないのかと思うと、じゃあやっぱり自分が一番悪いということなのか、という気持ちになってしまって、酷く落ち込んでしまったことが何度かありました。

もちろん言ってきたその人にとっては、まったく悪気はないことは今ではよく分かります。

ただ、うつ病になると心の中では自己否定をすることばかりして自分を責めることに夢中になるので、かけられた言葉を心の中で自己嫌悪を強化するような様々な言葉に、オートマチックに変換してしまうのです。

先ほどの言葉は私にとっては、「落ち込んでいるお前が悪い」と言われているかのように変換されて、受け取っていたのだと思います。

ですが最も大事なこととは、あれを言ってはいけない、これはダメだということではないと思うのです。 
 

最も大事なこと、それは、みなさんの大切な人の弱さを否定しない、ということなのです。

人は誰でも弱いモノです。それは当り前ですよね。

でもうつ病の人にとっては、それが許せないし受け入れられないことなんですね。

病気になった自分だけが特別に弱くて、ダメで、情けない、どうしようもない人間なんだって思ってしまっているんです。

もしかすると「人間は誰もが弱いものなんだ」ということを受け入れられるようになれた時から、その人が自分で立ち直っていく強さを信じられるものなのかもしれません。

だから、もしみなさんの大切な人が弱い自分を責めてしまっていたら「人はみんな弱いんだよ。弱いことは悪いことじゃないよ」という気持ちを持ってその人にかけてあげたい言葉を、みなさんの心の中から見つけてみてくださいね。

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私が苦しんでいた10年前ほど前と比べれば、うつ病をはじめとする精神疾患への理解はだいぶ期待できる環境になってきています。

一般社会が持つ、心の病気に対する見方やイメージというものも変化してきていることも実感することは多いです。

とは言え、やはり自分がうつ病であることを、周りにオープンにすることにはたいへんな勇気が要ることは、あまり変わりはないのではないでしょうか。

・こんな自分は拒絶されてしまうのではないか

・もう普通の人として見てくれないんじゃないか

・おかしくなったと思われるかもしれない

・誰も愛してくれないかもしれない

そう考えると、告白することがとても怖いですし、言い出す勇気を持てることを信じられない時もあります。

打ち明けられた方も、かなりショックを受ける場合もあるでしょう。

家族やパートナーのように近い関係であるほど、その衝撃も大きいと思います。

どうしたらいいのか、適切な接し方が分からないことがほとんどだと思います。

私たちみんながうつ病などの心の病気に対して、お医者さんやカウンセラーのような知識をあたり前に持ち、理解や共感をしめすことが出来るのが理想と言えば理想です。

しかし、その実現には時間もがかかることもあるでしょう。

でも今すぐにできることもあると、私は思います。

今もし、みなさんの大切な人がうつ病であることを打ち明けてきたとしたら。

そして、みなさんが大切な人とこれかもつながりを持っていきたいと感じていたらこんなことを考えてみて欲しいんですね。

「この人はどうして私に打ち明けてきたのだろう?」

どんな答えが出てきたでしょうか?

私から言えること、それは「こんな自分でも許して欲しい」「一人の人としてあなたと関わっていきたい」「ありのままの自分を受け入れて欲しい」、そうみなさんに伝えたかったからだと思います。

もし受け入れることに抵抗を感じる場合は、みなさん自身に「強さ・正しさ・勝ち負け」などへのこだわりが強くあるのかもしれません。

だから、目の前の人の弱さが許せないと感じるのかもしれないんですね。

そういった場合は、カウンセリングなどを使って自分の心の奥深くを見つめることで許せない理由や、過去の心の痛みと向き合ってみて下さい。

おそらく出来ない理由やそのルーツがいくつも出てくると思います。

そして、その上で「私は自分の痛みやこだわりと目の前の人と、どちらを大事にしたいのか」「正しさと幸せと、どちらを選びたいのか」と自分自身に問いかけて、選択して下さい。

人の持つ最も偉大なパワーの1つが「選択する力」と言われています。

みなさんと大切な人が未来の幸せに近づける選択をしてみて下さいね。

(続く…)

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