■Vol.9~「必要な時間」
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。
うつ病になると、たいていの場合著しく感情表現が乏しくなって、表情にも言葉にも感情が表れにくくなります。
元気だった人が落ち込んで無口になり、明るかった人が陰気になり、素直だった人がひねくれてしまったり、楽観的だった人が悲観的になってしまうんです。
周りの人から見ると、まるで人が変わったように感じてしまうかもしれません。
ひょっとしたら今までの性格が表面的なもので、病気になって地が出てきて、これがこの人の本当の性格なのかもしれない、と思うコトもあるでしょう。
でもそれは間違いなんですね。
私自身もうつ病になり、それまで頑張りに頑張りぬいてきた生き方が出来なくなりました。
例えるなら、ガソリンが切れかけた車で進もうとしていたようなものでした。
給油や定期点検を受けることを後回しにして、ただ闇雲に進み続けていたんです。
アクセルを踏んでもなかなか前に進んでいかないモノだから、さらに強く踏み込んでいくのですが、当然徐々にスピードが落ちていきます。
焦る気持ちを感じながら、それでも床が抜けるくらいの強さでアクセルを踏み続けているうちに、ガソリンが切れ、オイルが回らなくなり、エンジンが焼きついて車が止まってしまった時が、現実の私自身が動けなくなった時だったと思います。
もしかしたら、これ以上何でも抱え込んで一人で乗り越えていくのは無理かもしれない。これ以上頑張ったら命にかかわるかもしれない。
そう心と体が感じ、緊急事態だと判断して強制的にブレーカーを落としたのだと思います。
そして動けなくなることで、無理して自分を擦り減らす生き方をしてきた自分を立て直し、ガソリンを充填する休養を(多少強引な方法ですが)とるようにしてくれたのでしょう。
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もしも、そのまま休んでいることで元の自分に戻りたかったのであれば、そのまま時間をかけて休養をとっているだけで良かったのでしょう。
しかし、元の自分に戻ることではなく、自分の何かを変えていくことが必要な場合、今までやったことのない方法や、これまでとは違う新しい生き方を手に入れる為にさらに長い時間をかけて、それを模索していくことが求められるのです。
療養していた当時は何もしないで、ただ寝ているだけの生活なんて、それまでの私の生き方からは考えられないものでした。何の生産性も無い、自堕落でダメな人間になってしまったと感じていました。
しかし、それは今となっては必要な時間だったと思うんです。
それまでの、周りに自分を認めて欲しいという欲求を心の底に隠しつつ、人に弱みを見せることなく、強がって生きてきたこと。
そのくせ自分に価値など無いと決めつけて、卑屈なくらい犠牲的に他人に尽くさないと相手にされないと思い込んでいた、今まで繰り返してきた周りへの関わり方を変えていく為の時間として。
それまでと全く逆の生活を送ることが、私が新しい生き方を手に入れる為に必要な時間だったのでしょう。
毎日繰り返される自分責めにすっかり疲れてしまい、もう今の苦しみを終わりにしたい、楽になりたいと本気で思った時から、私の新しい生き方を模索するステージへの扉が開いたような気がしています。
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幸い私はカウンセリングを受けたことがきっかけとなって、カウンセラーという新しい仕事と生き方が同時に手に入ってきました。
今は毎日のようにクライアントと向き合い、問題を打ち明けてもらい、その人の
人生を聴いています。様々な情報と感情の中から、クライアントの中に眠っている本人が思ってもいなかった才能を見つけたり、まったく新しい価値を探し出したりすることが好きなんです。
どうしたら問題を解消できるのかをクライアントと一緒に悩んでいる時間も(誤解を恐れずに言うと)私にとっては、楽しいとさえ思えます。
悩んでいる時間はうつになる前と比べるとずっと長く、質も比べ物にならないはずなんですね。
でも、それがしんどく感じるより、やりがいの方が間違いなく上回っているのですから、以前とは変わってしまったんだなと思うと同時に、
本当に感じたいコトは、こうして誰かと一緒に乗り越えて喜びを分かち合うことだったんだろうと思えます。
もしあたなの大切な人が、うつ病の療養生活を送っていて、いったいいつになったら良くなってくれるのか、と焦ってしまう気持ちから、優しくできない自分を感じていたら。
もしかしたら、目の前の人も今までとは違う新しい生き方を模索する。
そんな必要な時間の中にいるのかもしれない、と思いながら見守ることも、大切な人が回復する為に、周りの皆さんが出来ることのコツのひとつだと知って欲しくて今日の記事を書きました。
(続く…)
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Vol.0~新連載シリーズのお知らせ「あなたの大切な人の『うつ』をラクにする方法」
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Vol.1~「支えている皆さんへ」
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Vol.2~「幸せのリーダーシップ」
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Vol.3~「周りにいるからこそ気づけるサイン」
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Vol.4~「初期段階の心理と接し方のコツ part.1」
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Vol.5~「初期段階の心理と接し方のコツ part.2」
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Vol.6~「初期段階の心理と接し方のコツ part.3」
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Vol.7~「お客さまのメッセージから」
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Vol.8~「お客さまのメッセージから その2」
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Vol.9~「必要な時間」
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Vol.10~「どうして“頑張って”と言ってはいけないのか?」
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Vol.11~「いっぱいいっぱいなのはどちらか?」
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Vol.12~「なんとなく調子が良くないとき」
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Vol.13~「なんとなく調子が良くないとき(その2)」
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Vol.14~「普通に接することの大切さ」