■Vol.13~「なんとなく調子が良くないとき(その2)」
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。
前回の記事の続きになります。
私がなんとなく調子が良くないときに、どんなことを心がけて日々を過ごし、また良くなったり悪くなったりする調子の波と付き合っていく為に、どのように自分自身を見ているのかを、ご紹介していきますね。
私が心がけていること、それは「セルフモニタリング」といって、自分の調子の波を自分で観察し感じて、今の自分がどんな調子なのかを把握するということです。
こうして言葉にすると、ごく当たり前のことに聞こるかもしれませんが、
私たちはいつの間にか、自分の心が今感じていることや自分の調子や状態に合わせて行動するよりも、周りの状況や求められていることに自分を合わせていくことを、無意識のうちにしてしまっていることがとても多いんですね。
だからこそ意識的に自分の状態を観察して、今の自分の心の声を聴くように、自分と対話することで、自分の調子の波が今どこにあるのかを探ることが大切だと思うんです。
これを始めるきっかけになったのは、私がまだ精神科に通っている時に主治医とコミュニケーションする中で教えてもらったことからなんです。
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私の通っていた病院は、比較的話を聞いてくれる時間を取ってくれたので、診察では前回の通院時からの調子の変化や、今どんな状態かを伝えたり、また主治医がそれに基づいて今後の治療の方針や、日々どんな過ごし方を心がけて良い生活習慣を身につけていくかなどを話し合っていました。
ただ、そんな話が出来るようになったのは、かなり回復が進んでからのことで、うつ初期の通院しだした頃は、まともに自分の状態を伝えることも難しいくらい酷い状態でした。
前回の記事でも書いたとおり、私は調子が良くなると無理をしてしまってエネルギーが切れる寸前まで頑張ってしまい、一気に調子を崩すことを
何度も繰り返していたので、ある程度良い状態にまではなるものの回復したと言える所まではなかなか良くなりきれなかったんです。
そのことを主治医に相談していたときに、「調子の波が良い状態から、下がり始める時を自分で捉えられるようになったほうが良い」と言われたんですね。
なぜかというと、「調子の波というのは良い時もあれば悪い時もあるので良い時だけをキープすることは出来ない。でも自分が今その波のどこにいるのかを感じることが出来れば、波の振れ幅や調子の落ちるスピードを緩やかにすることは出来るから。」ということでした。
それまでの私は、休みながら徐々に心にエネルギーが充填されていき、調子が良い方に波が向かっていくと、気持ちが多少前向きになり動かなかった体が動くようになり、(例えば、活字を読んでも頭痛がしなくなったり、普通に外を出歩けたり、人と会うことがおっくうに感じなくなったりする時があります。)
つい嬉しさのあまり、出来なかった今までを取り戻すように、一気に色々なことをやろうとしてしまったり、もう治ったと思って、急に生活のペースを元に戻そうとしたりしてしまっていました。
そうすると決まって、張り切って動き過ぎたり、すぐに限度を超えて頑張ってしまうので、エネルギー切れを起こして急に電池が切れたように調子の波が急降下して、また動けない何もする気がしない状態に逆戻りしていたのでした。
それを繰り返さないためには、調子の波が落ち始めたという変化を自分で感じ取れるようになる必要があると、主治医から教えられたのです。
それが「セルフモニタリング」だったんです。
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車の運転で言えば、ガソリンがどのくらい残っているかも確認せずに上りでも下りでもアクセルを踏みっぱなしにするという、1つのやり方しか知らなかったんですね。
しかし、それからは道の勾配などの状況に合わせてギアを変え、アクセルの踏み具合を調整しながら安全で燃費の良い走り方を覚えだしていったんです。
調子の落ちはじめを感じるには、そもそも調子の良い時に無理をせずに良い状態を引き伸ばしつつ、自然と下降して行く「落ち際」を敏感にキャッチする必要があります。
そうしないとエネルギーを使いすぎてしまい、波の落ち方が急激に下がってしまうので、まるで電池が切れたようにパタリと止まって何も出来なくなってしまうのです。
今度は飛行機で例えますが、急上昇した分だけ急降下で下がると最悪地面に激突する危険があります。
しかし緩やかに上昇カーブを描きながらその状態をキープ出来れば落ち始めも緩やかになるんですね。そして下降しても今度は低空飛行をキープしつつエネルギーを蓄えて、再び浮上することが出来るようになるのです。
また、人の心にも体にも変化は緩やかなほうが負担が少ないんですね。
調子の上下動は誰にでも自然に起こりますが、その変動が急であればあるほどその負担はキツクなり、ストレスとなってのし掛かってきます。
それはうつなどの精神疾患を抱える人に限らず、恋愛や仕事でそれぞれに問題や悩みを抱えている人が、その解消や解決に向かって自分を変えていこうとした時にも同様で、
焦って急いで変わろうとしてしまうと、無意識的な心の防衛反応で変化への抵抗感が出てきてしまうのです。
そうなると、なかなか思ったように進むことが出来なくなることもありますし、表面的に変化を感じられるようになっても、無理をした分だけ様々な歪みが予想外の部分に出てしまい、それが新たな痛みになってしまったりもします。
ですが、ゆっくり変化していくと多少の抵抗感を感じても確実に進んでいけるものなんですね。これは私がカウンセリングを通して感じた、心の性質の1つなんですよ。
だから一人だけで問題に向き合うよりも、私たちカウンセラー
のような助言者を傍らに置きつつ、自分の変化や進歩を客観的な視点で見てもらいながら向き合っていくほうが、楽だし確実なんだと思います。
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結局、調子が良い時に余裕を持って自分を見つめて行動しておくことで調子が落ちてきた時にも余裕を持って、状態が悪い時なりのことが出来るようになれる、というお話でした。
そして最後に、具体的なポイントをまとめて付け加えておきます。
◎良い状態の時こそエネルギーを節約して、予備の燃料タンクを作っておく感覚でセーブしながら自分の行動を見つめる。
◎調子の良い時の自分を基準にしない。(最悪のどん底を基準に 徐々に底上げしていくことが大事)
◎状態が悪いときには悪いなりに出来ることを見つける。(何もしないで いると、毎回そこから普段の生活レベルに上げることに時間と努力が 必要になってしまう)
今回はうつの初期よりは、回復に向かっている人たち向けの内容でした。
休み始めたばかりの方は、やるべきことを出来るだけ手放して休むことを最優先にしてくださいね。
また、回りで支えている方たちも無意識のうちに、うつの本人につきあって無理をしていることも多いので、自分の調子は誰よりも自分が気にかけておくことを心がける意味でも参考になるかと思います。
(続く…)
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