近藤あきとしのストーリー ~その3~

こんにちは
近藤です

前々回「近藤あきとしのストーリー ~その1~
前回「近藤あきとしのストーリー ~その2~

とお読みくださいまして、本当にありがとうございます。今日は~その3~をお届けします。

3,~カウンセリングとの出会い~

全く先の見えないひきこもりの生活の中で、月に1度病院へ行くこととインターネットだけが、外の世界との繋がりになっていました。

会社の同僚や友人たちと会おうとすることも、自分から連絡を取ることも無くなりましたが、私が休んでいることを知っている、ある同僚から時たま何てことのない内容のメールが、携帯に送られて来ることがあったのです。

当時は短いメールすら書けない状態なので、何も返信できないのですが、調子を尋ねるわけでもなく、励ましたり同情するのでもなく、私を変に気遣ったりしない、「今日こんなことがあった」とか、「今度あそこへ出かける」 などといった本当にありきたりな話を、ときおり一方的に送ってきたのです。

そして私はそのメールに、何故かとても救われた気がしました。

自分が嫌で嫌で仕方なくて自分いじめしか出来ないのですから、誰かと関わることなんてとうてい考えられない状態です。

しかし、その私の手の中の何てことのないメールは、こんな酷い状況でもまだ自分は忘れられていないんだと思わせてくれる、ホッとできる暖かさをくれた気がします。

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それは、きっとありきたりな励ましではなく「ただのメッセージ」、それだけだったことが当時の私には、最も受け取り易い形だったからかもしれません。

成立しているかどうかも分からない、頼りなくていつ消えてもおかしくないやり取りでしたが、それでも確実に手の中にあると感じとれるかすかな温もりが、その同僚との繋がりを確かなものにしてくれたと、今では思えます。

よく、うつ病の人には「頑張れ」と励ましてはいけないと話が聞かれますが私がかけられた言葉のなかで一番辛かったのは「気の持ちようだよ。」と言われることでした。

死にたいと思うくらい苦しんでも、病気のせいにすら出来ないのかと思うと、じゃあやっぱり自分が一番悪いということなのか、という気持ちになってしまって、酷く落ち込んでしまったことが何度かありました。

もちろん、その人にとってはまったく悪気はないことは分かるのですが、うつ病の人は自分を責めることに夢中なので、かけられた言葉を心の中で自己嫌悪を強化するような様々な言葉に、オートマチックに変換してしまうようなのです。

先ほどの言葉は私にとっては、「落ち込んでいるお前が悪い」と言われているかのように変換されて、受け取っていたのだと思います。

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30歳を過ぎて働けなくなって、家に閉じこもっているという厳しさは病気だけの辛さばかりではありませんでした。

私の家は田舎と言うほど郊外では無いにしろ、昔からその土地に住んできた古い家が多くある土地柄でした。

近所どうしの密なつながりや集落のしがらみがまだまだ残っているものですから、どこの家の誰が何をしているかということはスグに伝わってしまいます。

そういった世間の目も痛いくらい感じていたので、なかなか療養中と言ってのんびり休ませてくれる環境でもなかったのですね。

私の父はそういう土地で生まれ育ってきた人でしたので、日本的な権威をもった性格をしていて、周りからの目をとても気にするタイプだったこともあり、私が家に閉じこもっているのは「家」の評判を考えると、かなり頭が痛い問題だったようです。

父は家庭を顧みない会社人間で、営業からの叩きあげで最後は役員まで登り詰めるくらい働きづめの人生でしたので、そんな父からしてみれば私が働けないということが良く理解できないようでした。

たまに顔を合わせると、「いつになったら働けるんだ?」としか言ってこないので、父だけでなく他の家族とも会わないようになって、私は家の中でも孤立していったのでした。

もともと父に対しては子供時代から距離をとっていたこともあって、この時期はほぼ会話はありませんでしたし、父からも居ない者として扱われていたような気がしていました。

(今では父とも当時のことを話せるようになりましたが、父も私の状態を受け入れるまでには相当な時間が必要だったようです。)

***

完全に昼夜逆転した生活をしていたので、大体夜8時から朝8時が私の活動時間でした。

なぜ昼間に寝てしまうのかと言うと、何もしていないし役に立っていない自分が世間の働いている人たちと同じ時間に起きていることの罪悪感に耐えられないのです。

こんな自分の存在を知られてはいけないし、もし知られたらみんなからその罪を責められるのではないか、と常に感じていたのです。

みんなが寝静まった夜だったら、自分が起きていても他の人たちに知られることはありません。だから夜しか起きていられませんでした。

ほとんど外へ出歩くことはありませんでしたが、少し調子が良い時にはコンビニで漫画の立ち読みをしてみることもありました。それでも行けるのは夜中の人のいない時間帯だけでしたが。

食事は1日に1度とれれば良い方でしたし、家族と食卓を共にすることもほぼ無くなっていたので、ただ生きる為に何かを口に入れていたようなものでした。

体重が10kg以上落ちて、身体に力が入らなくなり壁づたいにしか歩けなくなっていましたので家の中を移動するのも一苦労でした。

ある日の夜中に部屋を出て何か食べようとキッチンへ行き、電気を付けてみるとテーブルの上のあるモノに気づきました。そのキッチンでは見慣れたはずモノが目に入った時から、言葉をなくすほど自分の鈍感さにあきれて、その一方で長く感じられなかった安心感に触れて茫然として立ち尽くしてしまったのです。

その時私が目にしたのは、私の母が置いてくれていた「私の茶碗と箸」でした。

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それまでもずっと、毎日毎晩テーブルに置かれていたのだと思います。

母が、私がいつ起き出してきても食事をとれるようにと、用意をしてくれていたモノでした。おそらくその時気づくまでにも何度も目にしていたはずですが、私は気づけずにいたのです。

でもあの日見つけた茶碗と箸から、母が「ここはあなたが居て良い場所」だと言ってくれてる、そう心から感じたことを今でもはっきりと覚えています。

何も言わずにただ毎日テーブルに置いてくれたメッセージをようやく受け取れたような気がしました。

その時思い出したのは、母は私が病気になってからもそれまでと全く態度を変えていなかったことでした。

あれこれ心配する訳でもなく、突き放す訳でもなく、私が調子が良くても悪くても、何をしていても何もしていなくても母は私への接し方を一切変えてなかったことを思い出したのです。

おそらくずっと私のことを信じ続けてくれていたのだと思います。

近すぎず離れすぎず、いつも信頼し続けてくれたことに思いが至った時に、ようやく私に安心を感じられる心が残っていることに気づけたのでした。

(母に後々聞いたところによると、一人でうつ病支援の勉強の為に市民講座に行ったり、精神科医の講演へ行ったりしていたそうです。)

処方された薬を飲んで寝ているだけの日々でしたが、それでも徐々に何とか今より少しでも楽になりたい、と思うようになっていきました。

最初に、こわばった身体を楽にする為に様々なマッサージにいってみたところ、タイ式マッサージが相性が良かったらしく、人生で初めて癒されるという感覚がなんとなく分かった気がしました。

そこで今度は心理的な部分を楽にしていきたいと思い、カウンセリングを受けてみたいと思うようになりました。カウンセリングは以前からうつ関連のサイトを見ていて知っていたのですが、どうしても重度の病の人が受けるイメージが私の中にあったので、まあ自分とは縁が無いかなと思っていたんです。

インターネットの検索のトップに出てきた「カウンセリングサービス」は思ったより気軽な感じがあることと、身近な悩みで相談している人が多いようだったのも気持ちとしては楽だったので、とりあえずお気に入りに登録しておきました。

***

サイトを知ってから数ヶ月、色んなコンテンツを読みまくり大半のカウンセラーのブログもチェックして、あの人にしようかこの人が良いかなと考えたりしていました。しかしこの期に及んでも、

「きっと他の人の方がもっと深刻な悩みを抱えているんでしょう?」

などと考えたりして、自分の話なんかでカウンセリングを受けても良いのだろうか?と思うと、何故か申し訳ないように思ったり、そして同時に自分の恥をさらすのが情けないような気持ちになってしまい、なかなか予約の電話を入れることができませんでした。

結局予約するまでに2ヶ月以上悩んでしまいました。

ですが、さすがに苦しい気持ちが溜まりに溜まって、ある日つい予約センターの電話番号を押してしまったんですね。サイトのコンテンツを隅々までチェックして、カウンセラーのブログを読みまくっていた割には、電話口では、「スグに話せる人をお願いします。」と言っていました。そうとう切羽詰っていたのでしょう。

初めての電話カウンセリングでしたが、話をしだすと話したいことが次々に出てきてしまいとにかく話を聞いてもらいました。誰かに話をじっくり聞いてもらうなんてほとんど経験がなかったので、否定もされずただ受け入れてもらうことがこんなに安心出来るものなのかと感じたのを覚えています。

そしてスグにまた予約センターに電話をして、次の日には面談カウンセリングを受けることになったのです。

…(その4)に続きます。

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