最近のカウンセリングでは、失恋や離婚の後で次の恋愛を期待しようとしたときに
「私は誰にも愛されてこなかった・・・」
という感情に足を引っ張られてしまい、次のパートナーシップに進むことが怖くなってしまった。というご相談が多かった気がします。
こういった場合に私たちの心の奥に隠れているのは「自分には愛される価値がない」という感覚。
これは【無価値感】と言われる感情なのですが、その多くは過去の人間関係で感じた痛みから生まれているようです。
たとえば
「お母さんに話を聞いてもらえなかった」
「お父さんに褒めてもらえなかった」
「過去のパートナーに酷いフラれ方をした」
などの、愛されたかった相手から、欲しい愛が貰えなかった悲しみの体験が心の痛みとして残っていくことは珍しくありません。そして、いつしか
「私のことなんて誰も愛してくれるはずがない・・・」
という諦めを抱えてしまうんです。
ここでは両親や過去のパートナーへの恨みつらみがあると同時に、「私がダメだから愛されないんだ」という自分自身を責める気持ちも抱えているのです。
愛をくれなかった相手と自分自身、両方へ不満と怒りが心に隠れているんですね。
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こうした過去の悲しみ、屈辱感、憤り、怒り、不満、不安などの感情を抱えたままでパートナーシップを築いていこうとすると・・・
多くの場合、出会ったパートナーがどれだけ素晴らしい人で、どれだけ愛情を与えてくれたとしても、
心の奥の不安や怒りが解消されていない分だけ、差し出された愛情を受けとれなくなってしまうんです。
その理由は2つ。
1つには、パートナーの愛に鈍感になってしまうこと。
どういうことかというと、【無価値感】を抱えている人は「自分そのものに価値がない」と感じているので、パートナーが差し出してくれた愛も価値のないものに感じてしまうんです。
無価値感が強いと、自分に価値がないと感じてしまうため、どうしても自分の外側に価値を付け足そうと無理をしてでも頑張ろうとします。
「役に立つことをすれば認められるはず、愛されるはずだ」と思って必死に頑張るのですが、
仮に結果が出ても「結局、私が頑張った分のリターンなんでしょ。でもこれをしなければ、やっぱり誰も見向きもしてくれないんでしょ」と思ってしまい、欲しかった承認(愛)が差し出されても価値あるものに感じられない。なんてことが起こるのです。
無価値感の罠の1つ。相手からの愛に対して鈍感になってしまう。のはこういった理由からなのです。
2つめは、目の前の愛を100%受け取れないから。
過去の悲しみや怒りなどの感情に捉われている分だけ、どうしても目の前にある愛情を十分に感じられなくなります。
どれだけパートナーが優しくしてくれても、愛される喜びを100%味わうことが難しくなって、十分に受けとることができないというわけです。
たとえば、両親への不満や怒りを抱えている度合が大きいほど、
「両親から愛されなかった私は、パートナーからは絶対に愛されるべきなんだ!」
という思いも大きくなってしまいます。
その思いのままパートナーと関わっていくと、どれだけ愛されたとしても、心のどこかに
「だって私が愛してもらうのは当然でしょ!」
と感じる自分が出てきてしまいます。
パートナーに素直に「愛してくれてありがとう」と言えなくなってしまうんですね。
これはパートナー側の立場からすれば、とてもつらい状況だというのはお分かりいただけるかと思います。
どれだけ愛しても受け取ってもらえないとしたら、最初は元気だったパートナーも徐々に徒労感で疲れてきて、最後に諦めてしまった時、あなたとっては
「また私の好きな人が私から離れていく・・・」
どうにもならない絶望感がまた心を占めてしまうかもしれません。
その感覚がさらに「やっぱり私は愛されないんだ・・・」という無価値感を強化していく、という悪循環につながってしまうのです。
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この無価値感の罠から抜け出すための方法。
それは、あなたが今までの人生で誰かからもらってきた愛情に気づいて、もう一度受けとり直す。というもの。
今日は、あなたが過去にパートナーと上手くいっていなかった分野、不満に感じていたこと、ケンカの原因などを振り返ってみてください(今パートナーがいる人は、今のパートナーとの関係で振り返ってみてくださいね)。
そして自分自身の心にこんな問いかけをしてみてくださいね。
「もし、そこに過去の両親との関係の中で感じた悲しみや怒り、昔のパートナーへの不満や憤りが関係しているとしたら・・・私はいったい誰の、何を許していないんだろう?」
すぐに思い当たる出来事が浮かんでくることもあれば、なかなかピンとこない場合もあるでしょう。
少し時間をかけても良いので、「まだ私が許していないことって何だろう?」と問いかけてみてください。
それに気づいたとき、当時の悲しみや寂しさが出てくるかもしれません。
もし感情が溢れそうになったら、我慢したり、抑えようとせずに、あの時の自分を思い出してみてください。
どんな様子で、どんな表情で、どんな悲しみをたった一人で感じていたんだろう?
もし想像できたら、あの時の一人ぼっちの自分を、抱えきれなかった思いと一緒に受けとめてみるイメージをしてみましょう。
しばらく感じ続けて、その感情が小さくなっていくのを感じたら、もう一つこんな問いかけをしてみてください。
「今まで、両親や過去のパートナーは私にどんな形で愛をくれていただろう?」
「ひょっとしたら私が欲しい形、望む表現ではなかったかもしれないけど、あの人は愛や優しさを表現しようとした時、どんなやり方で与える人だっただろう?」
最初はなかなか出てこないかもしれませんね。「そんなもの無かったわ」と思いたくなるかもしれません。
でもちゃんと見ていたはずなんです。大切な人たちの愛情がどんな形であったのか。
ゆっくりで良いので思い出すことができたら、受けとれなかった愛の一つ一つを、今日はもう一度受けとる。受けとりきる。と決めて、心の真ん中で受け取ってみようと思って見ましょう。
できれば「ありがとう」という感謝に変わるまでやってみてくださいね。
あなたの心を覆ってきた「私は愛されてこなかった」という感覚が、「でも、もしかしたら私ってけっこう愛されてきたのかもしれない」にひっくり返った時、あなたの問題は問題でなくなっているでしょう。
一度の取り組みで何もかもが変わることはないかもしれません。でも、あなたの心の中の「愛を見つける眼差し」の感度が少しずつ成長していくはずです。
あなたに向けられた愛に「ありがとう」と言えた時、あなたは愛を受けとれる人になったということです。
そして、あなたがもらってきた愛は、あなたが大切な人にあげたい愛に変わっていくんです。
その瞬間、あなたがじつは自分がとても愛し上手な人だったことに気づくことでしょう。
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それでは皆さんが健康で、心穏やかに、いい時を過ごされますように。
心理カウンセラー
近藤あきとし