心理カウンセラーの近藤あきとしです。
いつもありがとうございます。
さて、昨日UPした記事の続きです。

私たちは心がしんどい時に、頭で考えついている理由とは別に、本当の理由が隠れている。というお話をしました。
今日はそれが具体的にどういったことなのか、ある女性クライアントさんの事例から解説します(※了承を得ています)。
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彼女は職場でのイライラが止まらないというお悩みでカウンセリングに来ました。
独りよがりな仕事をする同僚にも、部下の話を聞かない上司にも毎日腹が立ってしまうのが、彼女の大きな問題になっていました。
全社員の顔が見渡せるくらいの規模の会社だっただけに、ずっと同じメンバーで仕事をしていて、異動も期待できないので、辞表をたたきつけて辞めてしまおうかと思っていたのです。
しばらく話を聞いているうちに、彼女が腹を立てているのが同僚や上司の人間性ではなく(誰々が嫌いとか、気に食わないのではなく)、仕事への姿勢に対して怒っていることに気づきました。
また、職場の空気が悪いと感じると彼女は率先して宴会を企画していて(コロナ禍になるずっと前の話です)、なおかつ彼女が声掛けをすると参加率が毎回ほぼ100%だったとのこと。
さらに、一人一人のスタンドプレーでなく、チームワークで喜びを共有することが、彼女にとって最も重要だったという話も出てきました。
そこで私は、彼女に「あなたが職場で思わずガッツポーズをしたくなるような状況ってどんな時だと思いますか?」と聞いてみました、
「うーん、みんなで共有していたゴールへ全員の力を合わせてたどり着けたときかなあ」
そう言う彼女の眼は、今までの怒りをかかえた様子から、未来の目指す場所を見つめるような眼差しに変わってきたのです。
私は続けてこう聞きました。
近藤「あなたは全員で心を一つにしてチームで一つの大きな成功を手に入れにいく。そんなメンバーで仕事ができたら、とても幸せってことですか?」
彼女「そうです。それが成功してもそうでなくても、全員と抱き合って『みんなよく頑張った!』って讃え合いたいです。」
近藤「もしかしたら、今のあなたが本当に感じているのは『自分が、みんなで進みたい、と声をかけても誰も一緒に来てくれないんじゃないか?』という不安。そして『私は一人ぼっち』という寂しさではないですか?」
彼女「・・・うん。そうですね。」
そう答える彼女はようやく本当の感情に触れることができたことで、静かに涙を流すことができました。
最後に、こんな提案をしてみました。
「今カウンセリングの中で出てきた、全員で一緒に進めないことがとても寂しい。みんなで一つのゴールへ進みたいし喜び合いたい。あなたが胸に抱えてきた思いを職場のみんなに打ち明けてみませんか?」
彼女は少し考えて「やってみます」と答えてくれました。後日、ミーティングで全社員を前に胸の内を話せたそうです。
その後どうなったかは、本人が今も同じ職場で働いていることが、その答えになりそうですね。
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私たちは、本当の感情が何か分からない時、つい表面的な感情だけにとらわれて、自分の本来のテーマを見失ってしまうことはよくあります。
でも事例の彼女のように、怒りの下にあった「寂しさ」と「不安」に気づけたことで本当の感情を感じられた時に、本当はどうしたかったのかが自然に受け入れられるんですね。
カウンセリングに来られるクライアントさんは、それぞれに問題や悩みを抱えていますが、その人が心の奥で本当に感じている感情と出会うことができた時に、本来のテーマが見えてくることが多いのです。
もしかしたら、今みなさんが抱えている問題というのは、本当のテーマへの扉になっているのかもしれません。
そして本当の感情に出会うことが、本質的な解決への道になっているようです。
それでは、皆さんが健康で、心穏やかに、いい時を過ごせますように。
心理カウンセラー
近藤あきとし