いつもありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。
「私の彼は、『今日はこれがしたい』とか『ここへ行ってみたい』のような、自分の好きなもの、したいことへの意志がほとんど感じられません。」
「デートに誘うのはいつも私からで、プランを考えるのも私ばかりです」
「私といるのが楽しいのか、つまらないのかもよく分かりません。彼のことを私はどう理解したらいいですか?」
恋愛のカウンセリングでは、こういったご相談もよく伺います。
彼女側からすれば、彼に前向きな意志表示がない・自己主張しないと、何を考えているのか分かりませんし、「私といて楽しいの?」と思ってしまうので、どこかに不安を感じながらのおつきあいになってしまいます。
それに毎回のデートプランを考えるのにも限界がありますからね。
「なんで私ばっかり考えないといけないのよ。たまにはあなたが企画しなさいよ!」
なんて不満も溜まってきてしまうのも無理はありません。
意思表示をしない彼にも、もちろん心理的な理由があります。今回はここを詳しく解説していきましょう。
と、その前にまず言えることがあります。それは、彼女の「私といて楽しいの?つまらないんじゃないの?」という気持ち。
これは、じつは彼の方が抱えている気持ちなんです。
「こんな僕といて君は楽しいの?」
「こんなつまらない男といても退屈でしょ?」
と、彼の方が不安なんですよ。本当は。
でも、彼は彼女のことが好きなので一緒にいるのですから、彼は彼女のことを嫌だとは思ってないはずです。
ただ、彼の信じている自己イメージは「自分はつまらない人間で、誰のことも楽しませられなくて、一緒にいる価値が無い男だ」というものでしょうから、
「なんでこんな僕とつきあってくれてるの?」
これを彼女にずっと問いかけている、ということを頭に入れながら記事を読んでいってみてください。
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まず、理由は大きく2つあります。
1つは、自信がないということです。
彼は「自分が考えたプランで彼女を楽しませることができない」とか、「自分には彼女を笑顔にしてあげられない」と思っています(彼の思い込みなんですけどね)。
だから、彼女が「これが好き」とか「ここへ行きたい」と言ってくれれば、それに合わせればいいので楽なのですが・・・
その裏では、
「いつも彼女に決めてもらっている僕は、なんて情けないんだ・・・」
とますます自信が失われていっています。その一方、彼女からすれば
「あなたも行きたい所ないの?」
「いつもくっついてくるばかりだけど、何考えてるの?」
「なんでもいいから、何とか言ったらどうなのよ!」
のような不満が、徐々に怒りになってしまいがちなんですよね。それをホントに彼にぶつけてしまうとどうなるかというと、
「やっぱり僕はダメなんだな・・・」
と自己嫌悪に拍車がかかるわけです。
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これは、じつは彼がしかけている心の罠にかかってしまっているんです。
どういうことかと言うと、私たちの無意識というのは自分の心の奥(潜在意識)で感じている感情と現実を一致させる方向へ動くからなんです。
彼は好きな彼女を笑顔にする自信がないわけですよね。そして心の奥には
「リーダーシップをとって彼女を楽しませられない自分はダメだ。つまらない男なんだ。」
という感情があるはずです。それが、彼女を怒らせてしまったことで、
「やっぱり僕はダメなやつなんだ・・・」
と無意識のうちに潜在的な感情と現実を一致させてしまうんです。
つまり彼女を使って、彼女を「怒る人」にすることで自分の自己嫌悪を証明しているわけですね(無意識なので彼本人は自分でそう仕向けていることには自覚はないですが)。
そして彼女は彼を「つまらない男」に感じてしまうわけですから、ますます幸せな関係から遠ざかる結果になってしまいます。
ちなみに、こういった無意識の態度は、彼に限らず私たちは身近な人間関係でしょちゅうやっていたりします。
知らず知らず、相手を利用して自分の思い込みを証明しながら、
彼女を怒りんぼにしてしまう。
彼をなまけものにしてしまう。
夫を「分かってくれない人」にしてしまう。
妻を「不安ばかりの憂鬱な人」にしてしまう。
上司を「話の聞かない人」にしてしまう。
部下を「自主性のない人」にしてしまう・・・
何となく思い当たることがある方は、「ひょっとして自分の態度や振る舞いで、相手をそういう人にしていないか?」(相手を使って自分の抱えている思い込みを証明しようとしていないか?)、チェックしてみるといいかもしれません。
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2つ目の理由は、過去に自分の感情を肯定してもらえなかった痛みを抱えているからです。
たとえば典型的には、子供時代に家族との感情的な関わりが少なかったり、気持ちに寄り添ってもらえなかったり、受け止めてもらえなかった経験がある場合などです。
私たちは本当に小さな子供の時には、自分の感情が自分でも分からないことがほとんどなんですね。
嬉しい、楽しい、悲しい、寂しい。
それらの感情を周りの大人(多くは両親)に受け止めてもらい、共感してもらうことで、ようやく「これは『嬉しい』んだ」「これは『悲しい』んだ」と実感していくものなんです。
一つひとつの感情に◎をつけてもらうことで、自分の感じている感情にOKを出せるようになっていきます。
ところがそういった経験が少ないと、自分の感情に自信を持つことができず、「好き・嫌い」や「快・不快」が自分でもよく分からなくなってしまうのです。
学生の頃までは、守るべき規則が多く、やるべきことが決まっていて、ある程度は敷かれたレールの上を進めば大きな問題にはなりませんが、
成長して大人になり、自分で進む方向を決めなければならい状況になると、「何がしたいのか分からない」「好きなことが分からない」ことで悩んでしまうんです。
もちろん全員がそうなるわけではありません。家の外で出会った人たちとの関りによって、自分の感情に自信が持てるようになったり、夢中になれることを見つけられたりして、好きなモノを心の真ん中に感じられるようになることもあります。
とは言え、そうした幸運な出会いはそうはありませんので、カウンセリングでも「自分の感情がよく分からない」という悩みを抱えた方のご相談を伺う機会は珍しくはないですね。
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では、そんな彼にどう関わったら良いのか?
まず大事なのは自信をもってもらうために、たくさん褒めることなのですが・・・
こういった彼はまず受けとらないはずです。疑って警戒する可能性も高いでしょうね。
なので、そこは織り込み済みで関わっていってください。
そして効果的に褒めるために大事なポイントが、冒頭で書いた
「なんでこんな僕とつきあってくれてるの?」
という彼からの問いかけに、どう答えるか?というところです。
彼は「どうせこんなつまらない男といても退屈でしょ」という信念をもっているので、そこをひっくり返す関わりが必要なんです。つまり、
・彼と会えたことがどれだけ嬉しい出来事なのか、
・一緒にいることでどれだけ安心感を感じているのか
・今がどれほど幸せな時間になっているのか、
を彼に教えてあげることです。
そうすることで、彼は
「今って彼女にとって幸せな時間なんだよな。楽しいって思ってもらっているんだな」
と徐々に自分という存在が彼女の喜びになっていることを受けとれるようになっていくでしょう。
さらに細かいことを言うと、彼の【感覚】や【センス】を褒めてあげるとより自信を高めてあげられるんです。
たとえば、どんなに些細なことでもいいので彼が選んだものを、
「〇〇君のセンス、私好きだな」
「あなたの選ぶものって、いつも間違いないよね」
などのように、感覚・センスを「イイね!」と伝えることを心がけてみましょう。
なぜ、こうした関わりが大事かと言うと、まず多くの男性は目に見えるモノや、積み上げた実績や数字、お金、地位や職業など、努力で手に入れたモノを自信の根拠にしてしまいがちです。
しかし、感覚やセンスという価値や才能というのは、目に見えないものですし努力で積み上げることのできないジャンルなんですよね。
言い換えると「自分にもともと根差した魅力」なんです。ということは、そもそもの自分が持っていた魅力なので、ここを受けとれると、努力で得た価値では感じられない「自分という存在の土台」から自信をもつことができるようになるんです。
ただ、この取り組みはけっこうな時間と、地道な努力と忍耐が必要なことは頭に入れておいてください。
それでも彼の小さな変化、自主性や意思を見つけたら、すかさず褒める。「イイね」を伝える。「◎」をつけてあげる。
あなたの応援が、彼に足りていなかった心の栄養になり、じわじわと成長していくのを間近で感じることができますからね。
その頃には、きっと彼にとって、あなたは「絶対に手放したくないパートナー」になっているでしょう。
それでは皆さんが健康で、心穏やかに、いい時を過ごされますように。
心理カウンセラー
近藤あきとし
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