いつもありがとうございます。
心理カウンセラーの近藤あきとしです。
●彼とうまくいっているはずなのに消えない「寂しさ」(1)
子供時代の対人関係が恋愛・パートナーシップでの関係に与える影響は意外と大きいです、ということはこれまで何度も記事にしてきましたね。
今日は、幼少期に一番親密な距離感だった相手がパートナーシップにどう影響してくるのか?ということをテーマにお届けします。
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ある女性クライアントは、今おつきあいしている彼との関係はとてもうまくいっているにもかかわらず、なぜか、
「きっと彼は私を好きじゃなくなったんだ」
という不安で落ち込んだり、寂しさが我慢できなくて悩んでいました。
彼はとても穏やかな性格で、気遣いもできる、まじめな男性。
ただ彼女が言うには、Lineの返信が次の日に帰ってきたり、彼の部屋に行きたいとお願いしても、「今日は無理」と言われてしまうと・・・
なんだか大切にされていないような気持ちがドンドン膨らんできて、居ても立っても居られなくなってしまうことが度々あるということでした。
それでも彼に嫌われたくないのでその不満と寂しさは彼に伝えられずに、いつも気持ちを飲み込んでしまっていたのです。
さらに彼は、彼女が友だちと飲み行くのも旅行へ行くのも、いつ何をするにも、「イイよ。楽しんできてね。」とすべて許してくれるような、器の大きい成熟さを感じさせる人でもあったんですね。
彼女からすると、なんでも自由にさせてくれて嬉しいのだけど、その反面、
「ホントに私が一番なの?」
という疑いも感じてしまうこともあったとのこと。
束縛もしょっちゅうだと嫌になってしまうけど、無ければ無いで寂しいと感じてしまうという声を聞くことは、じつは珍しくないのです。
嫉妬されると「めんどくさいな」と思いつつも、「この人ホントに私を好きなんだ」と実感できるんですよね。
もしかしたら「私もそうだわ」という人も、読者の中にいるかもしれないですね。
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さて、この彼女なんですが、父親が海外赴任でほとんど家にいない子供時代を過ごしていました。
お父さんがたまに帰って来ても、思いきり甘えたり遊んだりすることはあまりなかったとのこと。
いつもお土産を買ってきてくれるお父さんに対して、「わたしのこと好きなんだな」くらいには思っていたそうです。
母親は少し過干渉なタイプで、近くに居たがるタイプ(癒着してしまう)タイプだったので、彼女は小さいころからずっと近くで一緒にいたのがお母さんことになります。
お母さんとの仲は表面的には良好で、姉妹みたいな母娘の関係で「近すぎてウザい」と感じたことはなかったとのことでした。
実際にはもっと詳しいお話を聞いていったのですが、要はここから分かることは、
彼女が誰かと親密感を感じる基準というのは、お母さんくらい近い人だということです。
なので、パートナーシップ初期のロマンスの時期はとてもうまくいきます。
おつきあいがスタートした直後は彼も一緒にいることが嬉しいですし、二人の距離感が急接近していきますから、
彼女にとってはお母さんといた近さと同じになっていくので、おなじみの親密感を感じられる距離でいられるので安心なのです。
ただ裏を返すと、それくらい近くにいないとすぐに寂しくなってしまうとも言えます。
また常にお父さんが不在の状態が長かったわけですから、本当はそばにいて欲しい気持ちを素直に感じることが出来なかったことも考えられます。
お父さんのいない不安を心の奥へ押しこめて、それが当たり前なんだと思うようにしてきたのだとしたら、潜在的には子供の頃からずっと寂しさを抱えてきたのかもしれません。
となると、彼との関係で寂しさを感じてしまうというよりも、心の奥には「ずっと寂しかった自分」がいつもいて、ちょっとしたことが呼び水になって、ひょっこりと顔を出してくるというのが本質的な理由だったんですね。
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わたしは彼女に、この問題を解消していくためには、お母さんとの近すぎる距離を離して癒着を剥がしていきながら、ちょうどいい距離感にしていくことが必要だというお話をしました。
親密感の基準になる距離感を適切なものにしていければ、彼との間で感じる感情も変わっていくからです。
彼女に提案したセラピーはこんな感じでした。
まずは父親・母親にどんな文句があったのか?をこれまでを振り返って思い出してもらいました。
そして次に、思い出した文句をイメージの中の両親へ言葉にして伝えてもらう、というもの。
子供の頃に言えなかった不満・文句を表現することで、
「本当はこんな言葉をかけて欲しかった」
「『もうやめて』と言えなかった思い」
「こんなお父さん・お母さんでいて欲しかった」
子供の頃に言いたかったけど言えなかった気持ち。つい家の状況を考えて空気を読んで飲み込んできた言葉を表現してもらいました。
そしてようやく「本当は寂しかった」ことを声にすることができたのです。
彼女は、そこからお母さんとの感情の境界線を意識することで、近すぎた距離を開けて、大人の女性どうしとして適切な関係を築いていくことができました。
抑えてきた感情が溢れてケンカをしたこともありましたが、それもまた、今まで家庭の中に無かったコミュニケーションの学びになっていきました。
と同時に、寂しさを感じたときは友だちに頼ったり、自分で受け入れていくことを覚えていったのです。
今までの親と子の関係から、両親と対等な関係を築くという、本当の意味で大人になるためのステップを踏んでいけたのです。
私たちは子供なりに家庭の事情をよく見てきました。
そして両親を助けるために早く大人の心を手に入れようとします。
ただ、その分だけ子供らしい心はどこかへしまい込まれてしまうんですね。
すると大人になってから自分の欲求を自覚できないまま、それらをパートナーになんとかして満たしてもらいたくなるのです(彼に「わたしのこと好きだったら◎◎してくれるはずでしょ!」と思っている時などですね)。
今の自分が、子供の心が抱えてきた傷みに気づいて受け入れていくことで、無かったことにしてきた部分にも光があたり、本来の自分自身を取り戻すことにつながっていきます。
次回も続きをお届けしますね。↓

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最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
次回もお楽しみに。
それでは、今日があなたにとって素晴らしい日でありますように!
心理カウンセラー
近藤あきとし