もしかしたら、「私たちが不幸でいること、問題を持ち続けること」で誰かに復讐をしているかもしれない。
と言ったら、ちょっとドキッ!としてしまうかもしれませんね。
私が心理学の道へ入った頃、今の言葉をトレーナーから言われた時に、私が一番苦しかった時、問題を抱えていた頃、心の底ではどんなことを考えていたかな?と思い返してみたことがありました。
30才前後の頃は仕事が尋常ではないくらい忙しく、家と会社の往復だけが人生のような日々でした。
そんな時を思い出すと色んな怒りを抱えていたなあと気づいたんですね。
「仕事が次から次に来るのは上司の管理能力が無いせいだ」
「自分が要領よく出来ないのは、昔先輩がちゃんと教えてくれなかったから」
「いつも頼まれごとを聞いてやっているんだから、周りは少しは感謝してくれ」
「こんなに頑張らなくてはいけないのは、父親が仕事人間だったせいだ」
なんて不満を持っていたことを思い出しました。
もちろん当時はそんなことは表面的には感じてはいませんでしたが、自分でも気づかないうちに、心に依存的な心理を隠し持っていたのです。
誰かに不平不満を言っている時というのは、ある意味自分がダメな人であることを、誰かのせいに出来る時でもあるんですね。
と言うことは、私たちが問題を抱え、不幸な状態でいる間は、不平不満を誰かへの文句として言い続けることが出来る、ということなんです。
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また、家族やパートナーなどで問題のある人が身近にいると、自分の問題と向き合わなくて済む、というメリットもあったりします。
例えば、以前カウンセリングをしていた女性にこんな方がいました。
その方は彼氏はすぐに出来るけど、結婚が見えてくるとなぜか仲が上手くいかなくなるパターンを繰り替えしていたんですね。
ご家族の話を聞いてみると、お母さんがかなり心配性で、小さい頃から何かと口を挟んできては世話を焼いていたとのことでした。
そして彼女は、いつも素直にお母さんの言うことを聞いてその通りにしてきたそうです。
その結果、希望した大学へ進学・大手の会社へ就職し、問題も無く、先行きの明るい人生を歩んでできたように見えます。
しかし、ある時気づいたのは、それは自分の希望する人生ではなく、お母さんの望んだ生き方だったということでした。
よくよく考えると、子供の頃からいつもお母さんが必要なものを先回りして選んでいたので、自分の好きなものを選んだ経験がほとんど無かったのです。
お母さんの選んだ好きなものを、自分の好きなものだとずっと思い込んでいたんですね。
「私の好きなもの、なりたいものって何?分からない。」
そのことでとても悩んでいたのだそうです。
また、彼女には他に3人の兄弟がいたのですが、みんなお母さんの言うことにあまり耳を貸さずに、いちいち反発したり、マイペースで要領よく関わったりして、それぞれ早くに家を出て独立していったんだそうです。(当時その女性だけが実家で両親と暮らしていました。)
さらに話を掘り下げて聞いていくと、こんな感情があることに気がつきました。
「兄弟たちは好きなようにやっているけど、私はあんなことはしない。両親を放って好き勝手に生きるなんてことは絶対にしたくない!」
兄弟が好きなことをしているのを羨ましく思う反面、上に書いたような心理が心の中にあった分だけ、彼女にとっては、結婚して家を出て行くことは、両親を(特にお母さんを)捨ててしまうのと同じ、という気持ちになっていたのだと思います。
そして
「もし私が家を出たら、あの3人と同じになってしまう」
という気持ちもあったのでしょう。
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表向きにはハッキリと感じられることはあまりないのですが、心の奥でこうした感情を感じていることは少ないんですね。
その女性が家族のためと思って、自分を犠牲にしてきた、と感じていた分だけ不満と怒りがありました。
兄弟たちに対しては、自分が家を出ないことで、
「あなたたちみたいに自分勝手に生きて周りに迷惑をかける生き方はしない!」
と怒っていたのです。
お母さんに対しては、
「もっとしっかりしてくれないと、私が安心して出て行けないじゃない!どうして私ばっかり我慢しないといけないの・・・」
という不満がありました。
その不満や怒りをずっと抱えていながらも、喜びや幸せを横に置いて、いつの間にか他人の為の人生を生きていくことを選んでいたようです。
そして、自分の夢や希望や目標を諦めて、他の誰かの望む人生、つまらない人生を生きることで復讐をしようという心理があったのです。
「私はあなたたちみたいな自分勝手に生きる人たちの代わりに家に残って、必死で両親の為に尽くして、今も結婚もしないで一人でいるの。」
「お母さんの言うとおりに生きてきました。その結果、私は何が好きかも何がしたいかも分からないこんなに苦しくて、辛いだけの人生になってしまったわ。」
「ねえ、今のこんな私を見てみんなどう思いますか?」
と言ってやりたいが為に。
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私自身も過去に似たような問題を抱え、病気になるまで自分を追い込んでいました。
そして仕事はもちろん、普通の生活すらできないほど酷い状態の自分を見せて家族を責めようとしていたとしたら、その意味では復讐は成功していたと言えるかもしれません。
ただこのやり方で復讐するには、自分の問題を解消しないで抱え続けること、不幸であり続けることが必要になりますから、非常に苦しい人生と引き換え、ということになってしまいます。
自分が苦しんでいる間は、誰かに文句を言い、責めることができます。
そして問題のある人が身近に入ると、自分の本当の問題と向きあわずに済むのです。
その結果、自分の幸せは常に先延ばし後回しになってしまうのです。
あなたの問題や不幸を「誰かへの復讐かもしれない」という見方で捉えてみて下さい。
もし、それを言い訳にしてあなたの幸せを遠くへ置いたままにしようとしていることに気づいたら、もう今日で止めると決めましょう。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
では、また次回をお楽しみに!