パートナーシップのカウンセリングをしていると、「人と人との出会いというのは不思議だな」と感じさせられることが何度もあります。
お互いに無意識的に、心の傷を癒しあうパートナーを選んでいるのを目の当たりにした時には、特にそう感じますね。
もちろん当人にはそんな意識はないので、知らずにベストパートナーを選んでいるわけですが。
そんな気づきが無い状態から、関係が進むにつれて心の距離も縮まり、徐々にパートナーとの間で起こってくる問題や葛藤をカウンセリングを通してみていくと、お互いの過去の心の傷の追体験をしていることが分かってくるんです。
パートナーとの関係を通して、心の奥に封印していた過去の傷が刺激されてしまい、激しいケンカを何度も繰り返したり、仲良くなりたいのに過去の傷の影響でパートナーを信頼できなかったりと、最初は上手くいかないことが多かったカップルでも。
それぞれが過去に経験した痛みや、抱えてきた心の傷を分かち合うことをきっかけに、今度はその傷をお互いが癒しあうために出会ったという必然性を感じ始めるんです。
すると、二人の関係性が単なる恋愛関係ではなく、人生を分かち合うパートナーシップに変化していくのです。
クライアントさんが、そんな気づきを得た場面に立ち会えると、まるで「2人が問題を通して過去の痛みに向き合い、お互いの傷を癒しあい、絆を深めるために出会った」かのような感覚になります。
そして、「2人が過去の傷を癒すことで、同じ痛みを子供たちや周りの大切な人たちに与えるしまうのを止めて、代わりにあなたが貰えなかった愛を与えることができる人になれます」と言われているような感じになりますね。
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そんな関係性に進んでいけるカップルには、共通しているプロセスがあることに気づきました。
- お互いが過去にどんな体験をして、どんな痛みを抱えてきたかを知る
- お互いの痛みを分かり合えない問題にするのではなく、癒しあい乗り越えるためのプロセスだと気づく
- お互いが出会ったことに意味があるとしたら、どんな目的があったのかを話し合う
- 心の傷を癒した後に、どんな風に相手を大切にしたいのか?どんなパートナーシップを持つことが幸せなのかを分かち合い、お互いの願いを叶えられる方向へ2人で進んでいく
私たちが自分の感情を偽り、強がったり、拗ねたり、ひねくれたり、怒ったりせずに、心の奥にしまい込んだ「願い」を素直に伝えることができれば、できるほど、この思いが強くなっていく傾向がありますね。
私たちは皆、心の中に
【○愛される自分】 と 【×愛されない自分】
を抱えています。
パートナーの前では【×愛されない自分】を必死に隠しておつきあいしているのですが、実はパートナーも同じことをやっているんです(お互いに無意識的にです)。しかし心のどこかでは「やっぱり愛されないんだ」という絶望感にハマっていたりするんです。
※上で書いた「心の傷」が「愛されない」と思っている自分です。
ですが、そのままでは恋愛が我慢大会のようになってしまい、癒しあう関係には進めません。
「心の癒し」というのは、「愛されないと思っていたけど、愛されるんだ!」そう心から感じたところに起こるものです。
それは言い換えれば、「心の傷・痛みが作り出した【×愛されない私】」という夢から覚めた時でもあります。
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パートナーとの関係を通して、「私は愛されない」という夢(思い込み)から冷めるために必要な鍵は2つです。
1,自分の痛み(悲しみ、寂しさ、弱さなど)をパートナーを信頼して、誠実に、正直に伝える
2,パートナーがどんな痛みを抱えてきたのかを知ること
心の痛みをパートナーに打ち明けるのは恐いですし、過去に封印したつらい気持ちと向き合わないといけません。そしてパートナーを信頼する勇気が必要です。
多くの人が自分の痛みをコミュニケーションしようとすると、つい強がってみたり、どうってことない振る舞いをしてみたり、怒りを抑えられなかったり、攻撃的になったり、引きこもってしまうんです。
すると、そんな態度をパートナーにとってしまうと本当に伝えたい気持ちが伝わらないですし、パートナーにしてみたら、あなたに責められているように感じてしまうでしょう。
こうした行動は、パートナーに正直に気持ちを伝えることが怖すぎて、自分の心を守ることを優先したくなった結果ではあるのですが、それでは2人が癒しあう関係には進めなくなってしまいます。
自分の痛みよりもパートナーを大切にしようと思えた時、心の傷よりもパートナーを信頼する勇気をもてた時に、2人の関係が今までとは違う一歩を踏み出せるわけです。
冒頭にも書きましたが、パートナーシップ(人と人との出会い)が不思議だなと感じるのは、片方が相手を信頼する勇気をもってパートナーに自分をゆだねた時、もう一方のパートナーの方にも心に許可が下りて、自分の弱さを打ち明ける勇気がもてるようになるんです。そしてお互いを助け合う道が見えてくるんですね。
それは「お互いにの痛みも傷も理解しあい、受け入れあい、癒しあう」ことができる道です。過去の人生のすべてを分かち合う深い絆をつくれるパートナーシップに進んでいけるのは、そういうカップルなんです。
そういう意味では、心に傷や痛みがあることは、弱さでも恥でもなく、お互いの絆をより深く強くするためのものなのかもしれませんね。
そして、ここまで進めた時にようやく「2人で◎◎な関係になれたら、私は本当に幸せ」という、心からの「願い」を分かち合うことができるのです。
次回は実際のカウンセリングの事例をご紹介しながら、今回の記事の内容をより深くお届けしたいと思います。
それでは皆さんが健康で、心穏やかに、いい時を過ごされますように。
心理カウンセラー
近藤あきとし
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