前々回『怒りのパターン』
前回『怒りのパターン2』に続く怒りシリーズの3回目です。
これまでのポイントとしては、
◎怒りを溜め込まないように、自分の中の些細な怒りに気づくこと。
◎怒りの下にはネガティブな感情が隠れているので、そこを見つめて素直な感情を相手に伝えていくこと。
によって振り回されることなく、怒りと向き合うことが出来るということでした。
それでも、いざ怒りを感じる場面になった時には、上手く表現できずに爆発するパターンを繰り返してしまうという人もいるでしょう。
また、そもそもいつ怒りを感じているのかに気づけないという人もいるかと思います。
それは無意識のうちに、感情を抑え込むことが昔からのクセになっているからなんですね。
私たちは怒りを感じる自分を嫌っている度合いだけ、怒りを自分の中に感じた瞬間に、心の中から遠ざけようとするのです。
例えば、みなさんの子供時代の身近な誰かに、すぐ感情的になったり何かあるたびに怒る人がいたとします。
あるいは、常に機嫌が悪くてピリピリした緊張感を振りまいていた人がいて、その傍でいつも怯えながら成長してきた経験を持っていたとします。
すると、その人の持つ怒りや不機嫌、感情的という要素を嫌ってしまうのです。
同じものが“自分の中にあってはいけない”と思い、その要素を徹底して排除したり「絶対にあの人のようにはならない!」と心に誓うコトもあります。
自分の嫌っている怒りや、不機嫌などの感情を感じたくないので感じそうになった瞬間に抑え込んでしまうようになるのです。
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別の言い方をするなら、怒りの感情を感じることが苦手、とも言えるでしょう。
例えば、父親が普段は優しいけれど、怒りだすと感情的になって怒りをぶつけてくるような人だった場合、もともとその父親が怒りを感じることを苦手にしていた、ということになります。
上手く怒りを表現できないから溜め込んでしまい、一気に爆発させるしかないのですね。
実は、それを身近に見ている子供も同じように怒りを感じることが苦手になるのです。
父親が怒りの扱い方が分からなかったので、子供もその扱い方を学ぶことができなかったということなんですね。
また怒ることを禁止された家庭だった場合には、些細な怒りを出せずにイライラを溜め込んだ状態で成長していくので、誰に対しても嫌悪感を感じやすくなります。
長期間にわたって怒りを溜め込んでいるから、心の許容量に余裕が無い状態が普通になってしまうため、何か言われただけで過剰に反応してしまったり、逆に抑えすぎて全く無感覚になって感情表現がなくなってしまうこともあるのです。
怒りを抑え込んでいる度合いだけ、つい怒ってしまった時には自己嫌悪でひどく自分を責めてしまうようになります。
そして今度は、それまで以上に無理やり抑え込もうとするので、怒りのエネルギーで自分を傷つけてしまうなど、激しい自己攻撃に発展していきます。そこから「うつ」になったり、自傷行為をするようになることもあるのです。
また「父親のようにはならない!」と心に決めていたのに、父親の持っていた怒りの要素を、自分の中に見つけてしまった時には嫌っていた分だけ激しく自己嫌悪し、自分を責める心理が生まれるのです。
そうすると他人に対しての感情に、自分が両親を嫌っていたように今の自分もみんなから嫌われたり責められるのではないか、という恐れを感じるようになってしまうんです。
両親を“悪い手本”のように見ていて、自分はその逆をしている“正しい姿“だと、ずっと思い込んできたのかもしれません。
その悪い手本と同じになってしまったと思ったら、自分が両親を責めていたのと同じだけ、周りから攻撃されると感じてしまうのです。
それが原因で他人との間に壁を作ってしまうこともあります。
“正しい自分”は受け入れるけれど、“悪い自分”は否定する。心の中で自分を二つに分けて、裁くことを繰り返していたとしたら
その奥底には、こんな感情があることが多いのです。
「私は誰にも愛されることなんてない」
だから良い子の部分だけを愛されるように、表に出そうと無理をし続けてしまったのかもしれません。
そして悪い自分は、ずっと見捨ててきてしまったのかもしれません。
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そういった感情にまつわるクセを、解放し取り除いていくにはカウンセラー・セラピストのような、受容的な役割を担ってくれる人に寄り添ってもらいながら、一緒に感情に向き合っていくと良いでしょう。
心理学をベースにした癒しを提供しているワークショップなどの安全な場所で、自分の良い部分はもちろん、弱点やダメだと思っている部分も表現して周りに受け入れてもらう体験をしていくと、閉じていた感情が開いていきます。
その際、ネガティブな話をする時には、怒りの下に隠れていた素直な感情を見つめて表現していくことができれば、周りもずっと受け入れやすくなるのでそのように心がけてみると良いと思います。
そうした受容的な場での体験はとても有効ですが、いきなり大勢の中に入るのはちょっと・・・と思う方はまずは1対1の個人カウンセリングから始めてみると良いでしょう。
グループワークにせよ、個人カウンセリングにせよ、安全な場所で、安心して人と関わっていくことを覚えていくと、「こんなところ人には見せられない」と思って心の奥に隠してきた本来の自分との繋がりを取り戻せるようになります。
そこから、子供の頃に止まっていた心の新しい成長が始まるのです。
滞っていた感情を整理していくと、素直さが自然に外へ向かって伝わっていくようになるので、他人から好かれやすくなるんです。
もしそうなれたら、自分で自分を認めることも愛することも、今よりもずっと楽に受け入れられるようになれますよ。