前回からの続きです。
つい自分から「負け」を選んでしまう人には、その周りに「勝ちたい」と思っている人がいることが良くあります。「勝とう」としてくる相手にいつもなら、みなさんが負けてその場を丸く収めてきたかもしれません。
しかし、今日は負けを選ぶパターンを変えてみようとしたとします。
ではその相手をどう受け入れていけば、自分と相手がより良い関係になれるかを考えてみます。
前回のブログでは、勝とうとしてくる相手は、実は自分の正しさを相手に間違いを認めさせることでしか、確認できない人かもしれないということだと書きました。
それを認めつつ「まずはそういうやり方でしか、自分の正しさを感じることが出来ない、その人の苦しさを見つめたうえで、相手の言い分を聴いてあげるコトが大切になってくるのです。」とお伝えしました。
これを具体的にどう考えれば良いかと言うと、自分の考えとは違うことを言ってくる相手に対して、否定せずにただ話を聴いてあげることです。
そして、なお且つ自分の気持ちを偽ったり、嘘をつくことをせずに、です。
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自分の気持ちを否定することなく、相手の言い分を受け入れて認めてあげる。
相手に勝つのでもなく、かと言って平伏するのでもなく正面から向き合って話を聴いてあげることです。
「ああ、君はそう思うんだね」
「そうかあ、それがあなたの考えていることね」
と、相手の話を100%認めて受け入れてみましょう。
まず相手の投げてくるボールを、しっかりとキャッチしてみることです。
それが、状況を変えていく第一歩になるでしょう。
自分も正しいし、相手も正しい、としたうえで話を聴いて受け入れる。
この考え方を知らずに話を聴いていると、どちらが正しいのかという勝ち負けの世界になり、これまで通り負けを選べば、みなさんが敗者にならざるを得ません。
それは相手の投げるボールを、キャッチすることも避けることもせずに、ただ体を丸めて、ぶつけられるのに耐えていたようなものかもしれません。
どちらも正しい、という新しい考え方・価値観を持つことが大切なのです。
今までは、それが表面的に相手に勝ちを譲っていただけだったので、どこか嫌な感じや不安感が拭えなかった為に、勝ったにもかかわらず、相手は何度もみなさんに、勝負を仕掛けてきたのです。
対人関係を変化させるには、時間と忍耐が必要なことも多くありますので、必ずしもすぐに結果が出るわけではないことは、前提として頭に置いて臨むことも必要でしょう。
しかし、みなさんが「良き聴き手」になり、相手を認めて受け入れるうちに、次第にその態度は、きっと打ち解けやすい方向へ変化していくでしょう。
いつかあなたの投げるボールもキャッチしてくれる時が来るかもしれません。
なぜなら前回書いたとおり、勝とうとしてくる相手は自分の正しさに自信がないので、「私は間違ってないよね」と心理的に問いかける気持ちが、勝ちたいという態度として表現されているわけです。
なので、その問いかけが否定されずに受け入れてもらえると、ホッと安心を感じさせることが出来るのです。
相手が安心感を覚えると、お互いを理解しやすいと感じてくれますし、みなさんには感情を表現しやすい、と思うようになっていくでしょう。
そうすれば自然と親密感が高まり、みなさんとの距離を近くに感じて、それがまた安心感に繋がっていくのです。
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それってなんだか、カウンセラーのすることみたいだと思った人は、とてもするどい方です。
実はその通りで、今挙げたことを行うには、それこそカウンセラーのような受容する力と聴く為のテクニックが必要なんですね。
ただし、みなさんがカウンセリングの勉強をしなければ出来ないという訳ではありません。(もちろん勉強すれば、より相手を受け入れる力は身につくでしょう。)
受容とは、私の言葉で表すなら「あたたかい態度で相手を受け入れる」ということになります。みなさんの思う「あたたかい態度」で相手に向き合うことが、何より大切なのです。
聴く為のテクニックとは、どちらも正しいという考え方を持って、相手の話を聴いてみようと思うことです。
もちろん、今すぐ簡単に出来ることではないかもしれませんが、みなさんの目の前にいる誰かとの問題が、自分自身の心の課題だと思って地道に取り組むことを続けられたら、おそらくその先には大きな心の成長が待っているはずです。
相手の為よりも、自分という人間の幅を広げる為のチャレンジになるでしょう。
もし相手を受け入れる感覚が分かりにくかったり、難しいと感じるなら、みなさん自身がカウンセリングを受けることで、否定されず気持ちを共感してもらいながら、話を聴いてもらう体験をしてみてください。
誰かに受け入れてもらう感覚を覚えることで、今度はみなさんが相手を受け入れることが出来るようになれますよ。
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■逆にあなたの回りに、すぐ「負ける」人がいるのなら、
いつの間にか、その人を追い詰めていなかったか振り返ってみませんか?
そしてどうしたら、その人に安心してもらえるか、本音を口にしやすいか、そんな雰囲気を作るには、何を変えていったらいいのかを考えてみましょう。
■あなたが、つい「勝とう」としてしまうパターンを持っているのなら、
自分の中の弱さを否定するのを止めましょう。
ずっと誰もあてにしないで、ひとりで何もかもやらなければならないと思って、誰にも頼らずに物事を押し進めてきたのではありませんか?
先に進めば進むほど、立ちふさがる問題は高度になってきてはいませんか?
次々にやっかいなコトが起っていませんか?
もう自分だけで乗り越えるのは無理かもしれないと、限界かもしれないとどこかで気づいていたのではありませんか?
あなたが人生の困難を乗り越えて、強さや知識を身につけてきたとしたら、今あなたの周りにいる人たちも、あなたと同じように成長してきていますよ。
もうあなたの中の弱さを否定しなくても大丈夫です。
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第13回の最後に、勝っている方が負けていて、負けている方が勝っているという複雑な構造のお話をしましたが、そういう関係になっているかもしれないと思ったら、こんなことを考えてみて下さい。
「自分の負けを認める」のと「自分が勝っていることを受け入れる」のとでは、どちらが抵抗があるでしょうか?
これはやりたくない、と思った方があなたのテーマになります。
前者なら相手に素直に頭を下げることが、後者は文字通り勝ちを受け入れようと思ってみることが必要です。