あくまで一般的にはという話ですが、男性は女性に比べると感情を表現することが苦手です。
子ども時代に、主に父親から、
「男だったら泣くんじゃない」とか、
「弱音を吐くな!」とか、
「グチグチ文句を言うんじゃない!」など、
とにかく感情を抑えることを躾として教え込まれることが多いのです。
すると、ネガティブな感情を感じても表面に出さないように我慢したり、無理やり押し殺して、何も無かったかのように感じていくようになるのです。
私自身の家族関係を例にとって、この種の問題がどんな形であらわれるのかを見ていきましょう。
私は第一子の長男で、下に弟が一人いる男二人の兄弟として育ってきました。
いつも両親からは、
「あなたはお兄ちゃんなんだからだから、しっかりしてね」
「弟をちゃんと面倒をみてあげるんだよ」
と言われていたので、徐々に自分の欲求よりも、親から教えられた「やらなくてはいけないこと」を優先するようになっていきました。
両親の言うとおりにして、わがままを言わずに我慢したり、弟の面倒をみたりすると、両親から『良い子だね』と褒められます。
その一方で弟はというと、私ほど頑張らなくても、何もしなくても可愛がられていたりします。
私がおもちゃで遊んでいても、弟が欲しがると
「お兄ちゃんなんだから、弟にあげなさい!」
といって取りあげられて、弟に渡されることも多かったですね。
私にしてみれば、
「自分がお兄ちゃんというだけで、僕がもらえるものまで、弟に取られてしまう」
「弟は後から産まれただけなのに、何もしなくても愛されるアイツは何なんだ!」
という不平等さ、ズルいじゃないか!という気持ちがいつもあったことを憶えています。
そうなると、よく起こるのが、両親が見ていないところで、お兄ちゃんが弟を叩いたり蹴ったりして、いじめるようになることです。
「お前がいるせいで、僕のモノが奪われてしまうじゃないか!」
という怒りそして嫉妬が噴出してくるからです。
じつは男性社会のありとあらゆる競争の原理はこれと同じだったりします。
子供時代は、求めているものが母親からの愛情やおもちゃやお菓子でした。
それが大人になると、お金や仕事上のポジション、地位や名誉というモノになります。
対象は違いますが、原理は同じなんですね。
そして、このパターンを強く持っている男性は、なぜか「欲しいものを手に入れようとしたときに、必ず邪魔者が現れる」という現象が起こるようになります。
恋愛や友人関係、会社の出世競争などで、必ずライバルが現れたり、周囲から敵意を向けられたり、利用されて追い落としにあったりしてしまうんです。
私自身も、かつては「きっと誰かに邪魔される」という思いを抱えて周りを見ていました。
そのまま進めば上手くいくのに、警戒しすぎて失敗する。という出来事が繰り返し起こっていた時期がありました。
もし、あなたがこういった問題で悩んでいたとしたら、あなたが嫉妬していた人たち、兄弟姉妹、親、友人などを許すことにチャレンジした方がいいでしょう。
この場合の「許す」というのは、誤解して攻撃していたことを謝る、ということです。すると、この罠から抜け出すことができます。
◇嫉妬するのは子供時代の「恥ずかしい」がルーツ
カウンセリングをしていると、長男という役割を演じ続けていたために、甘えたくても甘えられない男性に出会うことも少なくありません。
子供のころは弟がいる手前、甘えることが「恥ずかしく」感じてしまったので、上手く甘えられなかったんですね。
私もそのうちの一人でした。昔は小さい甘えん坊な弟を見ていたときに、
「弟はしょうがないなあ、またお母さんに甘えて。まったく子供だよなあ」
と言って、いつもやせ我慢していたような気がします。
自分が甘えられないので、その甘えを我慢するために、「甘えるのは子供だからだ。僕はもう子供じゃないから甘えたりしないんだ」と決めたんでしょうね。
両親に甘えている弟を見ながら、私自身に言い聞かせるように、弟にも言っていたのだろうと思います。
こうして育っていった男の子は、甘えたり、誰かに頼ったり、助けを求めることに抵抗感を持つようになります。
甘えるにしても、何か正当な理由がないと甘えられなくなっていくんですね。
とはいえ、長男も普通の人間ですから当然甘えたいときもあるわけです。でも、そんな自分が許せない、甘えられない。でも甘えたい。という葛藤で苦しくなることもあります。
すると、甘えられるのは人に見られていない隠れた場所なら自分に許可が出せる、ということになります。
女性には人前でも特に抵抗なく彼に甘えられる人はけっこういますよね。
でも男性でそれができる人はそうはいません。なぜなら先ほど書いた、子供時代に感じた「恥ずかしい」という思いが先にたつからです。
そういった感情のパターンを持っている男性は、自分の弱さや感情を素直に認められないときほど、周りへの批判や嫉妬、怒りとして現れてくるんですね。
「甘えたい、助けてほしい」と感じているときほど、怒ってしまう男性ってけっこう多くいるのです(いわゆる昭和時代のお父さんには多いですね)。
女性からすると、内面と外に出てきている表現が全然違うので、彼の気持ちが分からなくて混乱してしまうこともあるでしょう。
逆に、男性のこの心理を感じられる女性は、男女関係の達人の才能があるといってもいいかもしれませんね。
◇大義名分があると男性は甘えやすい
このように男性は、抑圧された甘えや依存心が、嫉妬という形で出てきます。ただ男性は女性よりも感情を抑圧している部分が大きいだけに、女性以上にウェットで、依存的で、ウジウジすることも本当はあるんです。
それくらい男性にとっては、感情を表現することがとても怖かったり、情けなくて、弱くなってしまうと感じたりするのです。
(長男以外でも、長男的なポジションなっていた人や、女性でも小さいころから、長女的なポジションにいた人、我慢してきた人や、感情を抑圧してきた人は同じようなパターンを持つことはあります。)
もし、あなたが女性読者で、今日お話したような彼と付き合っているのなら、彼が素直に甘えられる正当な理由を作ってあげると良いでしょう。
大義名分を差し出してあげるわけです。
「ここでは大丈夫よ」という、あなたのOKサインがあれば、彼はいつもよりずっと素直になりやすくなりますよ。
抑圧してきた男性ほど、許可を下してくれる大義名分には弱いですから、たいていの男性は受け入れてくれるでしょう。
ただし中には、恥ずかしさが上回るあまり、偉そうな態度で
「そこまで言うんなら甘えてやってもいいけどな」
「オレがこうしたいって言ったんじゃないぞ、お前がイイって言ったから・・・」
という甘え方をする男性もいます。
超自立的に生きている人や、年上の彼女に対して上手く甘えられない年下の彼(頑張ろうとしすぎているから)なんかは、この「偉そうに甘える」態度をよくとったりしますね。
そんなときは
「わたしがここまでやっているのに、何なのその態度!」
とカチンとくるかもしれませんが、それが今の彼の精一杯なんだと、菩薩のような広い心で受け取ってあげていただければと思います。
最後に、男性の読者のかたで、あなたが感情を素直に表現できない人であれば、少しずつでもいいので気持ちを表現するように心がけてみましょう。
特に普通の男性だったら素直になれない場面ほど、あなたの感情を正直に表現できると、彼女はとっても喜んでくれるはずです。
ここで具体的な場面を言わないのは、あなただけの表現を考えぬいて見つけて欲しいからです(どうしても思いつかないときにはご相談くださいね。一緒にじっくりと考えていきましょう)。
あなたが苦手な場面で一生懸命に伝えようとすることが、彼女にとっては何よりも嬉しいことなのです。